全3回の糖尿病シリーズの最後、治療についての後半です
前回までに基礎知識編、診断編、治療(予防ともいえる)食事・運動療法について
お話してきましたが、ここでは薬物療法についてお話します
処方医が何を考え処方しているか、などを理解していただく一助になればと思います
HbA1cが6.5%以上で経過しており、食事療法や運動療法でも
なかなかうまくいかない場合には、いよいよ薬物療法となります
多くの糖尿病治療薬のテーマは血糖コントロールなわけですが
おおまかに分けてインスリン(分泌)が関わる薬と
インスリン(分泌)に関わらない薬に分かれます
現在、糖尿病の治療薬として使用される薬剤は
インスリン(分泌)に関わる薬剤としては
1. スルホニル尿素(SU)薬・・・血糖値に関係なくインスリンを分泌させる
2. 速効型インスリン分泌促進薬・・・血糖値に関係なくインスリンを分泌させる
3. DPP-4阻害薬・・・血糖値があがると必要なインスリンを分泌させる
他には注射薬として
4. GLP-1受容体作動薬・・・血糖値があがると必要なインスリンを分泌させる
5. インスリンアナログ製剤・・・直接インスリンを投与する
が使用されます
インスリン(分泌)に関わらないものとしては
1. ビグアナイド(BG)類・・・インスリン抵抗性改善、消化管からの糖吸収抑制など
2. α-グルコシダーゼ阻害(GI)薬・・・糖質の分解・吸収を遅らせる
3. チアゾリジン誘導体薬・・・脂肪細胞のアポトーシス(細胞の自死)を誘導など
4. SGLT2阻害薬・・・腎臓で余計な血糖を捨てる
現在の糖尿病治療の主流は内服で
”血糖値があがると必要なインスリンを分泌させる”方法;DPP-4阻害薬
と
”腎臓で余計な血糖を捨てる”方法;SGLT-2阻害薬
の2つであろうと思われます、実際に私もこの2剤のどちらかを使用します
現在、糖尿病と診断されると、先に発売されたこともあって
多くの方はDPP-4阻害薬が処方されるかと思います
ジャヌビア、グラクティブ、エクア、ネシーナ、トラゼンタ、テネリア、スイニー、オングリザ、ザファテック、マリゼブなどがあります
これは、DPP-4阻害薬の特徴でもある
”血糖値があがると必要なインスリンを分泌させる”効果が
安全に血糖を下げる可能性があるため、多くの医師が処方します
1-3カ月の経過をもって、HbA1cなどのデータの改善具合と相談し
薬剤の継続、あるいは増量、もしくは薬剤の追加を検討します
追加する際にはインスリンの抵抗性が考えられる場合にはBG類が検討され
他、α-GI薬やチアゾリン誘導体薬がそれに続きます
個人的にはSGLT-2阻害薬は良い薬とは思うのですが
まだ発売されて間もない(上市から5年)ことと
高濃度の尿が尿路に与える感染症以外の可能性を否定しきれず
出来る限り優先度を下げて使用している状況です
もちろん、使用した方が良い場合もあると思いますので
それは患者さんとよくよく相談してきめることにしています
何にせよ糖尿病をよくするということも大切なのですが
インスリンが血糖に関係なくガン発症リスクに関わる可能性も否定できない
(PubMed;日本人が著者ですが英語論文です)
こともありインスリンが多すぎていいことはないはずです
出来る限りインスリン導入をせずにあるいは遅らせることで
肝臓癌をはじめとした、糖尿病関連の癌リスクを軽減できるはずです
糖尿病の基礎知識編や糖尿病の診断編、糖尿病の治療(食事・運動療法)もよければご覧ください